アドボカシー(公開日:2020.09.15)
「新型コロナウイルスと世界の栄養問題〜いのちを救うための取り組み〜」東京栄養サミットに向けたオンラインイベント報告
セーブ・ザ・チルドレンは、9月4日に「新型コロナウイルスと世界の栄養問題〜いのちを救うための取り組み〜」東京栄養サミットに向けたオンラインイベントを開催しました。国際機関やNGOをはじめ、開発機関や学術界、食品企業などから約250人が参加し、さまざまな分野における世界の栄養問題への関心の高さがうかがわれました。
イベントでは、栄養改善の重要性と必要な支援をアジア、アフリカ、中東での取り組み事例とともに紹介しました。また2021年12月開催の「東京栄養サミット」に関し外務省より最新情報が共有されました。
冒頭、牧島かれん衆議院議員(国際母子栄養改善議員連盟事務局長)より、母子保健分野において途上国から日本のリーダーシップを期待する声が寄せられていること、また世界的に栄養不良の危機が拡大する中、日本政府が主催する東京栄養サミットの重要性がさらに高まっているとコメントがありました。
国際母子栄養改善議員連盟としては2020年3月に「東京栄養サミット2020に向けた提言書」を採択しており、議連として日本政府への働きかけを継続することが宣言されました。
世界の栄養問題に注目した第一部では、初めに栄養不良対策行動ネットワーク(NAM)の渡辺鋼市郎氏より、保健セクターを通じた栄養改善についてミャンマーでの事例とともに説明がありました。
ミャンマーでは急性栄養不良に陥った子どもへの治療・回復支援を促進するために、栄養状態の確認や予防啓発を実施。さらに、母親自身がMUAC(上腕周囲径)測定により子どもの栄養不良を発見する方法など、現地コミュニティと共にに子どもの命と健康を守る活動が紹介されました。
命を奪うリスクが高い急性栄養不良への対応は、保健施設での外来や入院治療を組み合わせた支援パッケージが有効であるとともに、「保健サービス」と「栄養サービス」の双方が機能し、連携することなしに改善はできないことが強調されました。
続いてJICA(国際協力機構)国際協力専門員の平岡洋氏より、食料システムと栄養の関連性について説明がありました。持続可能な開発目標(SDGs)やWHO(世界保健機構)国際栄養目標2025達成において、フードシステム(栄養に配慮した農業)が重要な役割を果たす一方、そのためには農業・食料セクターがより「栄養素」への意識を高める必要があると述べました。
農業政策の分野では、食料安全保障の観点から家庭で起こる食料不安に対応すると共に、「栄養素に基づいた政策枠組み」を導入し、たんぱく質や鉄分など特定の栄養素や、栄養不良に陥りやすい支援を提供する人たちに関するデータをもとに具体的な課題設定を行い、必要な栄養素を供給するという考え方が求められています。
深刻な飢餓や栄養不良問題を抱えるアフリカ地域においては、依然として栄養素に基づいた政策が乏しく、JICAが実施する「食と栄養のアフリカ・イニシアチブ」(IFNA)はこうした政策を後押しするマクロ支援として有効だと述べました。
続いて国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA)保健局長の清田明宏氏より、パレスチナ自治区ガザ地区で暮らす一般家庭を例に、脆弱な地域における栄養支援について紹介がありました。食料不足を抱える地域は環境問題や紛争の影響を受ける地域が多く、新型コロナウイルス感染症の影響によりこれらの地域での食料不足は倍増し、2億6,000万人が食料不安に陥ると予想されています。
現在、ガザ地区に暮らすパレスチナ難民の7割(およそ100万人)が毎日の食事を国際機関の食料援助に頼らざるを得ない状況にあります。また経済的困難を抱える家庭は健康的な食へのアクセスが乏しく、安価で高カロリーな食品に偏ってしまうため、栄養バランスが崩れ、過体重や肥満、妊産婦の貧血といった健康問題が深刻化している実態が報告されました(栄養の二重負荷)。
今後さらなる経済負担が見込まれる中、食料支援、食の質の改善、保健・医療サービスの継続など多様なセクターの取り組みが必須であるとともに、栄養はすべての人の人権や尊厳にかかわる問題であり、栄養対策を国際協力の中心にすべきだと述べました。
イベントでは、栄養改善の重要性と必要な支援をアジア、アフリカ、中東での取り組み事例とともに紹介しました。また2021年12月開催の「東京栄養サミット」に関し外務省より最新情報が共有されました。
冒頭、牧島かれん衆議院議員(国際母子栄養改善議員連盟事務局長)より、母子保健分野において途上国から日本のリーダーシップを期待する声が寄せられていること、また世界的に栄養不良の危機が拡大する中、日本政府が主催する東京栄養サミットの重要性がさらに高まっているとコメントがありました。
国際母子栄養改善議員連盟としては2020年3月に「東京栄養サミット2020に向けた提言書」を採択しており、議連として日本政府への働きかけを継続することが宣言されました。
世界の栄養問題に注目した第一部では、初めに栄養不良対策行動ネットワーク(NAM)の渡辺鋼市郎氏より、保健セクターを通じた栄養改善についてミャンマーでの事例とともに説明がありました。
ミャンマーでは急性栄養不良に陥った子どもへの治療・回復支援を促進するために、栄養状態の確認や予防啓発を実施。さらに、母親自身がMUAC(上腕周囲径)測定により子どもの栄養不良を発見する方法など、現地コミュニティと共にに子どもの命と健康を守る活動が紹介されました。
命を奪うリスクが高い急性栄養不良への対応は、保健施設での外来や入院治療を組み合わせた支援パッケージが有効であるとともに、「保健サービス」と「栄養サービス」の双方が機能し、連携することなしに改善はできないことが強調されました。
続いてJICA(国際協力機構)国際協力専門員の平岡洋氏より、食料システムと栄養の関連性について説明がありました。持続可能な開発目標(SDGs)やWHO(世界保健機構)国際栄養目標2025達成において、フードシステム(栄養に配慮した農業)が重要な役割を果たす一方、そのためには農業・食料セクターがより「栄養素」への意識を高める必要があると述べました。
農業政策の分野では、食料安全保障の観点から家庭で起こる食料不安に対応すると共に、「栄養素に基づいた政策枠組み」を導入し、たんぱく質や鉄分など特定の栄養素や、栄養不良に陥りやすい支援を提供する人たちに関するデータをもとに具体的な課題設定を行い、必要な栄養素を供給するという考え方が求められています。
深刻な飢餓や栄養不良問題を抱えるアフリカ地域においては、依然として栄養素に基づいた政策が乏しく、JICAが実施する「食と栄養のアフリカ・イニシアチブ」(IFNA)はこうした政策を後押しするマクロ支援として有効だと述べました。
続いて国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA)保健局長の清田明宏氏より、パレスチナ自治区ガザ地区で暮らす一般家庭を例に、脆弱な地域における栄養支援について紹介がありました。食料不足を抱える地域は環境問題や紛争の影響を受ける地域が多く、新型コロナウイルス感染症の影響によりこれらの地域での食料不足は倍増し、2億6,000万人が食料不安に陥ると予想されています。
現在、ガザ地区に暮らすパレスチナ難民の7割(およそ100万人)が毎日の食事を国際機関の食料援助に頼らざるを得ない状況にあります。また経済的困難を抱える家庭は健康的な食へのアクセスが乏しく、安価で高カロリーな食品に偏ってしまうため、栄養バランスが崩れ、過体重や肥満、妊産婦の貧血といった健康問題が深刻化している実態が報告されました(栄養の二重負荷)。
今後さらなる経済負担が見込まれる中、食料支援、食の質の改善、保健・医療サービスの継続など多様なセクターの取り組みが必須であるとともに、栄養はすべての人の人権や尊厳にかかわる問題であり、栄養対策を国際協力の中心にすべきだと述べました。
第二部では、外務省より東京栄養サミットの目的や準備状況について説明がありました。2021年12月に延期された東京栄養サミットでは、5つの重点分野(保健(UHC)、食(フードシステム)、強靭性(脆弱地域への支援)、説明責任、資金)が設定され、政府やドナー、民間、市民社会などが何をすべきか検討し、その目標や政策をSMART(具体的、測定可能、達成可能、適切、期限付き)なコミットメントとして発表することが期待されています。
外務省よりコミットメントの作成方法や具体例について紹介されたほか、新型コロナウイルス感染症と栄養、さらに2021年に国連が開催する「フードシステムサミット」との関連が重要と説明がありました。
またJICAをはじめ国際機関と連携をしながら、栄養不良の問題を抱える国のコミットメント作成および実施を支援したいとの方向性が示されました。東京栄養サミットに関してはイベント参加者から多くの質問が寄せられ、国内の関心と期待の高さがうかがえました。
最後に、中村丁次日本栄養士会代表理事会長より、本イベントの総括として「栄養の持つ普遍性、公益性、多様性について改めて注目した際、東京栄養サミットの意義は非常に大きなものだ」とコメントがありました。
また国際規模の栄養不良改善が、人類が直面する諸問題を解決する下支えになると述べ、日本の栄養改善の知見を世界に共有し、日本だけでなく世界が健康で幸せになるよう日本がリーダーシップを発揮するべきだと訴えました。
セーブ・ザ・チルドレンでは、今後も世界の栄養課題や東京栄養サミット関連イベントを開催していきます。