アドボカシー(公開日:2026.04.14)
【開催報告】「学校で子どもの権利を学ぶ大切さについて考える」オンラインセミナーを実施しました
こども家庭庁の発足およびこども基本法の施行から、2026年4月1日で3年が経過しました。セーブ・ザ・チルドレンによる「全国3万人意識調査」では、子どもの権利条約を「聞いたことがない」という大人が約半数、子どもも3割超と、認知度の低さが明らかになっています。また、「教員向けアンケート」では、権利条約について「名前だけ知っている」「全く知らない」の回答が合わせて3割にのぼり、国内における子どもの権利に対する認知度は依然として低く、子どもも大人もどのように社会や学校で子どもの権利の理解を深めていくのかが問われています。
セーブ・ザ・チルドレンは2026年3月24日に、立命館大学大学院教職研究科の荒木寿友教授をお招きし、「学校で子どもの権利を学ぶ大切さについて考える」をテーマにオンラインセミナーを行いました。全国の自治体の教育委員会や教員、研究者や子ども支援団体などから133人の参加がありました。
画像:荒木寿友教授(立命館大学)とセーブ・ザ・チルドレンのスタッフ
当日は、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフから子どもの権利条約の基本、歴史的背景や大切なポイントについて解説した後、荒木寿友教授より講義がありました。
<プロフィール> 荒木寿友 教授(立命館大学大学院 教職研究科) 教育学博士。子どもの権利など人権学習を扱う道徳教育や、教育方法学が専門。
主な著書に『いちばんわかりやすい道徳の業づくり:対話する道徳をデザインする』など。
光村図書小・中学校『道徳』教科書編集委員。セーブ・ザ・チルドレンの「こどものケンリ」教材アドバイザー。
荒木先生はまず、学校教育における子どもの権利の扱いについて、「分散的であり、体系的に学ばれていない」という現状を指摘しました。子どもの権利は、道徳や社会科、総合的な学習の時間で断片的に扱われることはあっても、継続的・反復的に学ぶ機会は限られています。その結果、子どもたちの生活との関連性が薄くなり、理解が定着しにくいという課題があります。
子どもの権利の中で特に重要でありながら、日本で十分に保障されていないのが「意見表明権」です。「生きる」「育つ」「守られる」といった権利については子どもの権利として広く認識されています。しかし、「意見を表明する権利」については、大人でさえも意見表明が苦手なことが多く、大人のそのような態度を見て子どもも意見表明の大切さを理解しにくいという課題があります。子どもが意見を表明することは、自立や成長のプロセスであり、それを抑制することは子どもの自立を妨げることにもつながります。
また、大人は子どもの意見をすべてそのまま受け入れればよいというのではなく、子どもの意見に対して互いの意見の調和を図り、対話を通じて合意形成や対立の解消をしていくことが必要だと強調しました。
また、荒木先生は子どもが権利を学ぶ意義は、子ども自身が自分を守ることと他者を尊重することにあると言います。子どもが権利について知っていれば、暴力やいじめを受けた際に不当な扱いをされたことに気が付くことができます。また、自分に権利があるように他者にも権利があることを知っていると、権利の対立や衝突が起こった際に、対話を通じてどのように解決していくのかを学ぶことができます。
続いて、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフから、子どもの権利を学べるウェブサイト「こどものケンリ」を紹介しました。「こどものケンリ」の学習教材は、荒木先生にも多数の助言を得て制作しました。
全6種が揃ったセーブ・ザ・チルドレンの子どもの権利教材は、子どもの権利は 「自分と関わりがあり行使できるもの」 であり、自分自身が 「権利の主体である」 とイメージできるようになることを学習目標としています。教材を使って子どもの権利を学んだ子どもたちの「子どもの権利って、戦争や災害で大変な外国の子どもたちのものじゃなくて、自分のものでもあるんだと学んだ」
「大人だけでなく、子どもにも権利があると初めて知った。自分の権利も友だちや先生の権利も、みんな大切ということがわかった」
といった声も共有されました。

Q&Aの時間には、まず学習指導要領と子どもの権利教育に関する質問があげられました。荒木先生からは、「現状では学習指導要領に『子どもの権利』についての明確な記載はなく、人権教育の一部として扱われるにとどまっている。また、現在議論が進む次期学習指導要領で子どもの権利が明文化されるという見通しも持つことができない。しかし、生徒指導提要には子どもの権利に関する言及があり、今後の教員研修では子どもの権利が取り上げられる機会が増えていくのではないか。教員が権利教育に関心を持ったとき、『こどものケンリ』のような教材があることに意義がある。かつてジェンダーや喫煙に関する理解も法整備によって深まってきたことからも、今回こども基本法という国内法ができたことで、今後子どもの権利に対する理解は一気に広がっていくことが考えられる。」と回答がありました。
また、紛争・戦争の頻発や長期化、社会の分断や対立が進むなかで、子どもの権利を学ぶ意義は何かという質問も寄せられました。荒木先生からは、「SNSの発展により違いが見えやすい世界になったことが、分断が進む1つの要因かもしれない。難しい問題だが、違うから対立するのではなく、違うからこそ互いに分かり合える部分を探していくことが分断に対抗する策なのではないか。子どもの権利教育の中で、『権利の対立をどのように乗り越えるか、対立を解消する対話の方法』を子どもたちに教えていくことが重要。」と回答がありました。
参加者からは事前質問も含めて非常に多くの質問が寄せられ、子どもの権利への関心の高さを実感した時間となりました。
このセミナーを通じて、子どもたちが子どもの権利を学ぶこと、広く社会が子どもの権利の理解を深めていくことの重要性が再確認されました。セーブ・ザ・チルドレンは今後も、子どもの権利が社会のさまざまな場に広がるよう、引き続き活動を続けてまいります。
【お問い合わせ】
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシー部 社会啓発チーム
E-mail:japan.advocacy@savethechildren.org
TEL: 03-6859-0015
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