アドボカシー(公開日:2025.12.25)
【報告】「学校保護宣言 ナイロビ国際会議」に参加しました〈DAY 1〉

2025年11月25日-26日にケニアの首都ナイロビにて第5回「学校保護宣言 ナイロビ国際会議」が開催されました。「学校保護宣言」とは、紛争下で学校や大学を武力攻撃や軍事利用から守ることを目的とした国際的な指針です。2015年の策定以降、賛同国を中心とした国際会議が約2年に一度開催されており、今回の「ナイロビ会議」が5回目の開催となりました。
「ナイロビ会議」では、計67ヶ国より政府・軍関係者、国際機関やアカデミア、子ども・ユース参加者や国際NGOなど400人を超える参加者が集まり、「学校保護宣言」の実施状況や課題について最新の報告・議論が交わされました。日本政府からの参加は実現しなかったものの、『学校保護宣言キャンペーン』を代表してセーブ・ザ・チルドレンからスタッフが参加しました。
2日間の会議を通して最も印象に残ったことは、「学校保護宣言」をめぐる議論が大きく進展していること、そして子ども・教員など「紛争下の教育」における当事者の存在の大きさでした。
議論の焦点は、学校を攻撃・軍事利用しないことの是非ではなく、宣言を既存の国際的な枠組みに一層位置付けていくこと、教育への攻撃が起きた際の情報収集・報告のメカニズムを発展させること、それらのデータをいかに被害者支援や加害者訴追に活かしていくか、といった点に進んでいました。
会議の1日目には主に現状報告、2日目には宣言の実効性・アカウンタビリティ強化がテーマとなりました。両日とも多くの議論がありましたが、いくつか抜粋してご紹介します。
※「ナイロビ会議」2日目の報告ブログは後日公開予定
【会議1日目】「学校保護宣言」10年の歩み:各国政府・国連機関より
会議では、開催国ケニアをはじめ政府関係者による多数の登壇がありました。ケニアのムサリア・ムダバディ内閣筆頭長官は、国内法制度に「学校保護宣言」を組み込み、省庁間連携を図っている経緯を説明。「宣言策定から先の10年間で力強い枠組みができた、次の10年間では計測可能なインパクトをもたらさなければならない」と述べました。
ノルウェーのアンドレアス・クラーヴィーク外務副大臣は、「学校保護宣言」について「賛同国は37から122ヶ国に増え、国際的なスタンダードとして受け入れられている」と指摘。同外務省のキャスリン・アンデルセン文民保護特別代表も、「教育への攻撃件数の増加には心が沈むが、10年前は統計もなかった。少なくとも今は何に取り組むべきかが分かっている」と発言していました。
同じく賛同国のアルゼンチンからも、ルイス・レヴィット駐ケニア大使が登壇し、「『学校保護宣言』は紛争当事国だけでなく、国際社会全体に関わるものであることを強調したい。教育への攻撃は共通の人道的課題であり、まだ賛同していない全ての国にナイロビ会議を機に賛同表明するよう呼びかける」と訴えました。未賛同国への呼びかけは、スペインやドイツ、ブラジルなどの政府関係者からも表明されました。
左から、ケニア政府のムサリア・ムバダディ内閣筆頭長官、ノルウェーのクラーヴィーク外務副大臣、
同アンデルセン文民保護特別代表、アルゼンチン政府のレヴィット駐ケニア大使
「学校保護宣言」は、国連安全保障理事会など多くの国連機関にも支持されています。国連・子どもの権利委員会のティモシー・イケザ委員は、「武装勢力による学校の占拠も、重大な教育への攻撃事案だ。起きたことを記録していく必要がある。国際的なコミットメントが国内枠組みに反映されるよう、子どもの権利委員会としても各国政府に対してフォローアップしていく」と発言しました。
子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表のヴァネッサ・フレージャー氏は、国連安保理決議1612号において、紛争下の子どもの保護を強化するための監視・報告メカニズム(MRM:Monitoring and Report Mechanism)が確立されてから2025年で20年を迎えることにも言及。特別代表室として各国に対し、「子どもの権利条約へのコミットメントと『学校保護宣言』への賛同とともに、紛争下の子どもの保護に関わるパリ原則、バンクーバー原則といった関連原則も遵守するよう求めていく」と明言しました。
左から、子どもの権利委員会イケザ委員、子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表フレージャー氏
「教育への攻撃」が起きたとき:監視・報告の重要性
ナイロビ会議では、「学校保護宣言」に基づき学校・大学の軍事利用をなくしていく取り組みに加えて、紛争下で教育への攻撃が起きた場合の対応についても取り上げられました。
危機下の教育支援の調整を担う国際機関グローバル・エデュケーション・クラスター(GEC)のマルガリータ・リマレンコ氏は、紛争下のウクライナにおける攻撃のモニタリングについて報告しました。学校や大学、学生や教員に対する攻撃事案の情報収集について、リマレンコ氏は「質の高いデータは緊急支援にも活かされている」と指摘。攻撃の場所・程度といった情報は、どこで・誰に・どのような支援を届ける必要があるかの判断材料としても役立てられているそうです。
ウクライナは2019年に「学校保護宣言」に賛同し、国として行動計画も定めています。当初、ウクライナ政府は教育施設への爆撃などハード面の被害に重きを置いていたものの、「学校保護宣言」に関する研修を重ねる過程で、被害者のケアや補習教育(リメディアル教育)、教員の能力強化といった人的支援も重点化するようになってきたといいます。
一方、紛争後の復興支援においても、教育への攻撃のモニタリングが重要であると報告したのは、国連人道問題調整事務所(UNOCHA)シリア事務所のレイラ・ハッソ氏です。シリアでも、紛争の最中から地域住民や教育関係者と連携してモニタリングを行ってきましたが、紛争終結から移行期にある現在、攻撃から生き残った人たちが国連の監視・報告メカニズムに直接つながることができるよう支援しているそうです。「市民自身が被害を証言し、それらが記録・報告され、法的手続きへと活かされることによって、取り残されているように感じている地域の人びとも、『この国では人権侵害が見過ごされないのだ。いつの日か答えが出るのだ』と感じ取ることができる」と発言していました。
左から、UNOCHA ハッソ氏、GEC リマレンコ氏
紛争影響下で学び続ける 子どもたち自身の声
ナイロビ会議の会場で特に大きな存在感を放っていたのは、紛争影響下の国・地域から集まった5人の子どもたちでした。さまざまなテーマのセッションで、大人の登壇者とともに子どもたちが力強く証言していました。
ナイジェリア北東部ボルノ州出身のイブラヒムさんは、長年に渡り故郷が武力紛争に巻き込まれています。「最初に学んだのは読み書きではなくてサバイバルでした。でも教育が私たちにとっての命綱となったんです」と開会セッションでイブラヒムさんは話していました。「私は、今もなお紛争地から逃げられずにいる同窓生のために、ここで発言しています。パレスチナ・ガザ、スーダン、シリアにおける紛争は、国際法の侵害であるばかりでなく、子ども時代の侵害です。私たちがやるべきことは至ってシンプルです。子どもが生きて学校から出られるようにすることです」。
母国ブルンジでの紛争から逃れて、ケニア北西部のカクマ難民キャンプで生活するラマダンさんは、避難先で何とか勉強を続けています。「キャンプ内の学校も安全な環境とは言えません。狭い空間に大勢が集まっているので感染症が広がりやすいし、学校までの道には明かりがないので、子どもたちは暗い中を毎朝登校しなければなりません」。
自分の事だけではなく、「今すぐ各国政府のリーダーに戦争を止めてほしい。ガザとか毎日爆撃されていて・・・それをせめて止めるように働きかけてほしい」、「障害のある子どもも学べるように学校を増やしてほしい」と、その場にいない子どもたちのことを訴えていました。
左から、イブラヒムさん、ラマダンさん
会場では、世界各国の子ども・ユースのメッセージ映像も上映されました。『学校保護宣言キャンペーン』で活動する日本のユース・メンバーの声も一部収録されています。日本語字幕を付けて公開されていますので、このブログを読んでくださっている皆さまも、ぜひ視聴のうえ周りの方たちに広めていただきますようお願いします。
世界の子ども・ユースからのメッセージ|「学校保護宣言ナイロビ国際会議」に寄せて
YouTube視聴リンク https://youtu.be/5FFtCdq8-PE
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(アドボカシー部 社会啓発チーム)



